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がんゲノム医療への期待

武藤 学(むとう まなぶ)先生

京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 科長
武藤 学(むとう まなぶ)先生

国立がんセンター東病院(現・国立がん研究センター東病院)および研究所を経て、2007年から京都大学大学院医学研究科ならびに京都大学医学部附属病院(以下、京大病院)に所属。2023年からは京大病院がんセンターのセンター長を務める。

最近のがん治療は、どのように進化しているのでしょうか?

進歩するがんの治療法の中でも特に発展が著しいのが薬物療法です。これまでは正常な細胞にも影響を及ぼす可能性のある薬(細胞障害性抗がん剤)が主流でした。しかし、がんの組織を採取し、原因となる遺伝子の変化を特定することで、がん化している細胞に対してのみ攻撃する治療も登場するようになりました。

特定の遺伝子の変化に対して効果が見込める薬が見つかれば、従来の抗がん剤より高い効果で、かつ副作用が少ない治療法を選択できる可能性があります。

このように、がん組織を調べて得られた遺伝子の情報(ゲノム)に基づいて行う医療を“がんゲノム医療”と呼びます。患者さんのゲノム情報をもとに、体質や病状に適したより精密な医療が実現できるのです。

がんゲノム医療を受ける患者さんの治療の実態を教えてください

がんゲノム医療を受けるには、まずはがん遺伝子パネル検査で遺伝子の変化の有無を調べます。検査結果から、治療の対象となる特徴的な遺伝子の変化が見つかる可能性は4割程度といわれています。

また、効果が見込める治療薬があった場合でも、その薬が“公的医療保険で受けられる薬かどうか”は患者さんにとって非常に大きなポイントになります。公的医療保険で承認されている薬であっても、病状やがんの進行度などから公的医療保険の適用外とされた場合や、日本での使用が認められていない場合、その薬を使用した治療は自由診療となり、全額自己負担となってしまいます。公的医療保険の適用外の治療法しかない方において、治療費が高額であるとの理由から治療を断念されるケースもあります

  • ※がん遺伝子パネル検査後、保険適用とされていない薬を使用して治療を行う場合は自由診療(全額自己負担)となります。治療回数や期間は病状や治療薬によってさまざまです。使用する薬によってリスクや副作用が異なるため、治療を受ける前に医師の説明を十分受ける必要があります。なお、民間保険を活用する場合、給付対象となる治療や医療機関の範囲に制限があります。

読者の皆様にメッセージをお願いします

効果が見込まれる治療が登場し、治療選択肢が増えるなかで、自分に合った治療を求める患者さんが薬を使用できない状況を改善するために、適切な医療を提供できる体制の構築に向けて私自身も取り組んでいきたいと思っています。
また、近年のがん患者さんは若年化している傾向にもあり、いつがんにかかってもおかしくない時代ですから、自分の健康を自分で守るためにも、いざというときに安心して治療を受けられる備えをしておくことも重要です。

武藤先生が所属する京大病院がんセンターの魅力を紹介!

京大病院がんセンター

京大病院がんセンターでは個々の医師の判断ではなく、各領域を専門とする医師陣の検討を経たうえで治療方針を決定しており、よりよい医療を提供できるよう努めています。

  1. POINT1

    “ユニット制診療体制”で適切な治療方針を導く

    がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療などを組み合わせた集学的治療をはじめ、外科や内科、放射線科など複数の診療科の連携が欠かせません。当院では臓器別にがんの診療チーム(ユニット)を編成しており、どのような症例でも必ずユニットでカンファレンスを行い、治療方針を相談しています。診療科を超えてそれぞれの専門性をもとに知見を共有できるため、患者さんにふさわしい治療方針、治療方法を導き出す体制が整っています。

  2. POINT2

    総合病院として併存疾患や副作用にも対応

    高齢化に伴って、がん患者さんも高齢の方が増えてきています。ご高齢になると、がん以外にも病気を抱えている方も多く、がんだけを診て、治せばよいというわけにはいきません。当院は総合病院としての強みを生かし、がんだけではなく糖尿病や心疾患などの病気も総合的に診療して、適切な治療につなげています。また、がんの治療薬の発展に伴って複雑化してきている副作用に対しても、迅速かつ適切にマネジメントする体制があります。

【病院へのお問い合わせ】

総合窓口:075-751-3111 (代表)

  • ※病気や健康法等に関するご質問にはお答えできませんのでご了承ください。

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