退職金制度の目的
従業員の福利厚生の一環として退職金制度を導入する会社は多いのですが、会社には退職金制度の導入について裁量の余地があります。ところで「退職金制度をどのような目的で導入するのか」は明確になっているでしょうか?
INDEX
退職金制度は必ず導入しないといけないの?
従業員の労働条件に関する最低基準を定めているのが「労働基準法」ですが、そこでは「退職金を支払う義務」は定められていません。つまり、「退職金制度を導入するかしないか」は、会社の自由です。
しかし、退職金制度を導入した場合には、会社と従業員の間で退職金支払についての合意形成がされたこととなり、会社には「退職金支払の義務」が生じることとなります。
また、退職金制度を導入したら、退職金に関するルール(退職金規程)を就業規則に記載し行政官庁(所轄の労働基準監督署)に届け出ることも義務づけられています(労働基準法第89条)。
一方、従業員から見ると、会社に対して「退職金支払を請求する権利」を得たことになります。
これは、賃金と同様、民法における「先取特権(他の債権者に優先して弁済を受ける権利)」によって担保される「労働債権(雇用関係にもとづいて生じた債権)」となります。
退職金制度の導入可否は会社に裁量がありますが、一度導入したら「退職金支払は会社の義務」になります。
つまり、会社は退職金制度を導入していた場合、従業員の退職時にはまとまった現金を準備する必要がある、ということになります。定年退職の場合は、その時期があらかじめわかっているため計画的に準備することができますが、中途退職や不慮の事故などによる死亡退職金の場合、前もって準備することが困難ですし、用意できないと資金繰りに窮する可能性もあります。しかし、そのような場合でも退職金を支払う義務からは逃れられないのです。
- ※ なお、「退職金の支給額を減額する」ようなことを不利益変更と言いますが、原則として従業員の合意なしに変更することは「労働契約法」によって禁止されています。
退職金制度導入の目的
では、会社はどのような目的で退職金制度を導入するべきなのでしょうか?どこに重きを置くかは、会社ごとに異なりますが、主なものを確認してみましょう。
優秀な人材を採用するため
退職金制度の導入は任意ですが、多くの会社が導入をしています。したがって、「退職金制度がない」ことそのものが求職者に悪い印象を与える可能性があります。また、退職金制度がある会社は経営が安定している、という印象も与えます。
従業員の長期勤続を促し、長期勤続に対する貢献に報いるため
退職金制度は一般的に勤務した期間に応じて支給額が増えるように設計されるケースが多いです。
これは従業員に長期勤続を促す効果があるため、採用した人材にできるだけ長く働いてもらい、その貢献に報いてあげたいと考えるのであれば、退職金制度は非常に有効な手段と言えるでしょう。
従業員とその家族の退職後の生活を支えるため
従業員の退職後の生活を支えるための公的制度(老齢年金制度や雇用保険制度)だけでは、従業員の退職後の生活を支えるには十分ではなくなってきています。そこで、公的制度を補完するための福利厚生の一環として退職金制度導入があります。
他の会社でも退職金制度が導入されているから?
特に明確な目的を置かずに「他の会社にも退職金があるから導入した」という場合は要注意です。上で述べたように、退職金は制度を導入したら支払う義務から逃れられず、制度を簡単になくすことはできないためです。したがって、今一度「退職金制度の目的」を慎重に検討してみましょう。
当Webサイトに記載の法令・税務・制度などは2024年2月現在のものです。
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