学資保険の所得控除を解説|対象の税や控除額(新/旧)、申請方法とは
学資保険は、教育資金の積立部分である「貯蓄」と、契約者(保険料負担者)に万が一のことがあった場合に保険料の払込が免除となる「生命保険」の保障を併せ持った保険商品です。
そのため、学資保険は所得控除の一種である「生命保険料控除」を利用することができます。年末調整や確定申告をすることで、その年の所得から一定金額が差し引かれ、所得税や住民税の負担が軽減されます。
このページでは、学資保険の生命保険料控除の計算や申請方法について解説します。
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このページの監修者
辻田陽子(つじたようこ)
FPサテライト株式会社所属、ファイナンシャルプランナー。税理士事務所、金融機関での経験を経て、「好きなときに好きなことをする」ため房総半島へ移住。現在は地方で移住相談や空き家活用に取り組みながら、ファイナンシャルプランナーとして活動中。
学資保険の所得控除とは
「生命保険料控除」とは、1月1日から12月31日までに払い込んだ生命保険料などに応じて、一定の金額が契約者(保険料負担者)のその年の所得金額から差し引かれる制度です。
生命保険料控除には「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類があります。学資保険は、一般生命保険料控除に区分されます。
〈図〉生命保険料控除の対象となる保険商品
一般生命保険料控除の対象となるのは、生存または死亡に起因して、一定額の保険金などが支払われる保険契約です。将来の教育資金を積み立てる学資保険は、契約者である親に万が一のことがあった場合に保障が受けられる側面があるため、一般生命保険料控除に区分されています。
ただし、学資保険であっても、保険期間が5年未満では控除の対象とならない場合もあるため注意が必要です。
学資保険の所得控除はいくらか
生命保険料控除で課税所得から控除される額は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3分野の合計で12万円が上限になります。
学資保険の控除額がいくらになるかは、1年間に払い込む保険料によって異なります。また、新制度と旧制度に分かれており、保険契約を締結した日付によって、控除限度額が異なってきます。
また、学資保険の区分である「一般生命保険料控除」は、学資保険だけでなく、終身保険や定期保険などの保険料も合算して控除額を算出します。
新制度と旧制度の対象期間や、それぞれの控除額の計算方法について以下で説明します。
新制度の控除額
2012年1月1日以後に締結した保険契約等を新制度といいます。新制度に基づく一般生命保険料の控除額は、それぞれつぎの表の計算式に当てはめて計算した金額です。
〈表〉新制度の一般生命保険料控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円超4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
4万円超8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
たとえば、年間6万円の学資保険の保険料を支払った場合、課税所得の控除額は以下の計算により、3万5,000円となります。
6万円×1/4+2万円=3万5,000円
旧制度の控除額
2011年12月31日以前に締結した保険契約等を旧制度といいます。旧制度に基づく一般生命保険料の控除額は、それぞれ以下の表の計算式に当てはめて計算した金額です。
〈表〉旧制度の一般生命保険料控除額
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
2万5,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万5,000円超5万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万2,500円 |
5万円超10万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万5,000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
たとえば、年間6万円の学資保険の保険料を支払った場合、課税所得の控除額は以下の計算により、4万円となります。
6万円×1/4+2万5,000円=4万円
両方の控除額
新旧両方の契約がある場合は、旧制度の年間払込保険料が6万円を超えるかどうかで判断します。
旧制度の学資保険を含む一般生命保険料の合計が6万円を超える場合は、「旧制度の控除額」で計算した金額(最高5万円)が控除額となります。
6万円以下の場合は、「新制度の控除額」「旧制度の控除額」それぞれで計算した金額の合計額(最高4万円)が控除額になります。
たとえば、新制度で年額6万円、旧制度で年額4万8,000円の保険契約を締結している場合、旧制度の年間払込保険料が6万円以下ですので、新制度、旧制度それぞれで計算して合算します。
新制度:6万円×1/4+2万円=3万5,000円
旧制度:4万8,000円×1/2+1万2,500円=3万6,500円
新旧控除額の合計が4万円を超えるため、控除額は上限の4万円になります。
参考文献
国税庁「生命保険料控除」
学資保険で所得控除を受ける方法
生命保険料控除を利用するためには、自分で年末調整や確定申告の手続きをする必要があります。学資保険に加入している場合は、保険会社から「生命保険料控除証明書」が送られてきます。
会社員や公務員などの給与所得者であれば、勤務先で年末調整をする際に、勤務先から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」に記入し、「生命保険料控除証明書」とともに勤務先へ提出することで生命保険料控除の申告をすることができます。
一方、個人事業主やフリーランスの方は、所得税の確定申告をする際、生命保険料控除の欄に記入し、「生命保険料控除証明書」を添付することで控除を受けることができます。
ただし、国税庁のホームページからe-Taxで確定申告をする場合や、平成23年12月31日以前に締結した保険契約(旧制度)等で年間保険料が9,000円以下のもの、年末調整の際に控除を受けたものについては証明書の添付を省略できます。
注意したいのは、学資保険に加入しているからといって必ず生命保険料控除の対象となるわけではないということです。生命保険料控除は払い込んだ保険料に対する控除となるため、未払いの保険料分は控除の対象とはなりません。
学資保険で所得控除を受ける際の注意点
学資保険で生命保険料控除を受けるためには、いくつか注意する点があります。受取人などの設定によっては生命保険料控除を受けられませんので、注意点をしっかり把握しておきましょう。
受取人に第三者を設定すると控除は得られない
上述したように、一般生命保険料控除の対象となるのは、保険の受取人が保険料を支払った本人またはその配偶者、そのほかの親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である場合です。これらに該当しない第三者が受取人の場合は生命保険料控除の対象となりません。
たとえば、保険金受取人を妻としていたが、6月に離婚し11月に受取人を子に変更した場合、離婚した妻は受取人の要件に該当しないため、離婚してから子に受取人を変更するまでの6月から10月までは生命保険料控除の対象とはなりません。
一般生命保険料控除には限度額がある
一般生命保険料控除は、学資保険だけでなく、終身保険や定期保険なども対象です。そのため、学資保険以外にも終身保険や定期保険に加入している場合は、それらの年間支払保険料も合算して控除額を算出することになります。
たとえば、新制度の終身保険の保険料を年間12万円、新制度の学資保険の保険料を年間12万円支払った場合、支払保険料の合計は24万円となり、上記の計算式に当てはめた場合、4万円が生命保険料控除として所得税から差し引かれることになります。
いくら学資保険で高い保険料を払っていても上限額を超えた控除は受けられない点は注意が必要です。
学資保険で所得控除を受ける際は注意点をしっかり検討しよう
教育資金を準備するための学資保険は、生命保険料控除を利用できる点で大きなメリットがあり、選択肢のひとつです。しかしながら、生命保険料控除には上限額があるなど、注意すべき点もあります。
生命保険料控除は自らが申請しないと控除を受けられません。控除の対象となる保険料を正しく把握し、年末調整や確定申告を忘れずに申請しましょう。
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